ロトの紋章という伝説の漫画があったんだ その2

本物の“ベギラゴン”に出会いたいなら「ロトの紋章」

どうやら前回、「ロトの紋章」の良さを紹介しようとしたところ、内容に入る前に終わってしまったので、今日はまず登場人物の一人「ポロン」について書くということを宣言させていただきたい



冒頭からそんなことを言うのは、さっそく脱線したい衝動が込み上げてきているからであり、今にも私の中の熱い何かが丸出しのまま暴れ出さんと欲しているからだ。

それは漢文でいうと「我レ公衆ノ面前デ陳ヲ曝サント欲ス」的な心情であり「警察此レ市民ノ危険を排除セント漢ヲ逮捕セシム」的な感じの結末を迎えてしまうと思う



“クラウドファンディング”をご存知だろうか


クラウドファンディングとは、インターネットを通してクリエイターや起業家が不特定多数の人から資金を募ることを言います。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、製品開発やクリエイティブ分野などで利用されることが多いです。
引用:CAMPFIRE



何か新しく商売を始めようと思ったら、普通は銀行にお金を借りに行くものだが、クラウドファンディングとは、ネット上の個人から少額の資金を募りリターンを約束してプロジェクトを達成しようという超今っぽい試みなのである



凄いところは、ある人から見ると何の価値のない計画であっても、世界に散らばる趣味嗜好を同じくする仲間から資金を集めれば、それを実現させるパワーになり得るということで

最近では、クラウドファンディングで線路を買い取ったとか、映画ロードオブザリングの城塞都市を現実世界に再現しようとしたとか、おっぱいマウスパッドにロマンを求め過ぎて会社が傾いたとか、そこはさながら、夢を追い求める男たちのドリーム最前線と化している

どうか彼らに幸あらんことを



なので、やれ“銀行でお金を借りた”などと言おうものなら「ははあ?それがしは和同開珎でも借りてきたのでござるな?」と蔑まれそうな勢いですらある



先日、ささいなきっかけから、かつて月刊少年ガンガンに連載されていた「ツインシグナル」という漫画を調べていた時の話だ



ツインシグナルとは、「ロトの紋章」がガンガンに連載されていた93年頃、読み切りからスタートし、あまりの人気ぶりにあっという間に連載が決まったという異色の超SFマンガ
で、舞台は現代社会

ある悩める少年のもとにやってきた青っぽいロボとともに、笑いあり、涙ありの、時に科学の力で困難を乗り越え友情を深めていくという物語で、ジャンルでいうとSFサイエンスもの、もちろんロボは人型だ。



当時のガンガンには、ロトの紋章やハーメルンのバイオリン弾きといった重厚なストーリーが売りのファンタジー作品のほか、南国少年パプワ君や魔法陣グルグルといった、笑いに特化した独自路線の作品が多数連載されていたが、その中にさっそうと現れたツインシグナルのポップといったら衝撃だった



そもそも、ガンガン系には、今までサイエンスをテーマにした漫画がなく、何か問題を解決する手段があるとすれば、ことごとくメラゾーマかキタキタ踊りという有様であったし

シグナルは、形状が変化する特殊な金属「MIRA」でつくられているばかりか、動力にはシリウスという光をエネルギーに変える超凄い技術が使われているし、そればかりかパルスの高周波ブレードは五右衛門ばりに何でも切断できる科学技術の結晶でカッコよさが鬼!

アルファベットばかりが割り当てられたAナンバーズの未来感といったら半端ないばかりか、MIRAの正式名称メタロモーフ・オヴ・インナー・リフレクシヴ・アーティキュレーションはもちろん丸暗記必至だ。将来の役に立つばかりという確信があったのだ。ばかりか!



シグナルの登場は、それまで「力うどん」をすすっていた半裸の柔道家の前に、“大人カワイイ”と話題のラムレーズン塩くるみクレープ♡を差し出す行為に等しく、平らな物といえば瓦しか叩き割ったことのない格闘家にとって、どう攻めてたら良いのか皆目見当が付かず「野生の熊と対峙する方が楽でゴワした」と言わしめるほどの困惑と衝撃をもって迎えられた。つまりみんな夢中になった



私は、今でも腕に「刃」を付けたキャラを見るとパルスを思い出すし、ニュース等でフランスの素粒子加速装置とやらが話題になる度に「シリウス系?」と思うし、“シンガポールに拠点”とか聞くと、「あーはいはいシグナルパターンね」と思うのでゴワす



そんな本格的な科学設定に裏付けされた世界観で、「くしゃみ」に反応して「ちびシグナル」に変身してしまうという軽やかなコメディタッチのノリは、思わず見る人をたちまち笑顔にしてしまったし、シグナル以前の漫画はもはや大門五郎と化した。鉄ゲタを履いた大門五郎だ



とにかく、そんな思い出深いツインシグナルをネットで検索したところ、何と、作者自身がクラウドファンディングで続編製作のための資金を集めているではないか



しかも、2001年に連載が終わって17年も経っているというのに、2,100人もの人がお金を出し1,700万円も集まっただと・・!?

【公式】
マンガ『TWIN SIGNAL(ツインシグナル)』続編プロジェクト



私はすぐさま友人に「大清水さち(作者)がクラウドファンディングしてるじゃねえかあ!」と興奮ぎみにメールしたところ、ほどなくして帰ってきた返信は「幻想大陸もじゃねえか」である



マジかと

もう幻想大陸の説明は割愛するが、姉と一緒に手分けしてガンガンコミックスを集めていた17年前を思い出しては懐かしい気持ちになってしまった
あの頃のガンガン漫画はそれはそれは輝いていたのだから



いつのまにか、漫画の作者自身が、出版社に頼らずとも自分でお金を集めることができるようになったのかと思うともう驚きしかない



今や、農業でもつくれば安泰という時代は終わり、大量生産される安い外国産に対抗するために、作り手自身が価値を高めなければならない時代だ。



漫画家もただ良い漫画を生み出すために机に向かうだけではなく、外を向いて色んなことにチャレンジしなければいけないとでも言うのだろうか



しかも、プロとして自分の看板を掲げた上で、もし目標が達成できなかったら無傷では済まないわけで、一歩も二歩も踏み出した作者の勇気たるや凄いものがある



くしくも、ツインシグナルの描いていた未来的な世界から17年後の現在、当時は想像もできなかった新しい技術で、世の中の仕組みがどんどん変わってきたことを思えば、私たち人間自身も恐れずにチャレンジを続けなければいけないわけで、作者の姿勢からは、漫画以上のメッセージ性を感じることができるし、感動せずにはいられなかったのである




そこでポロン

本物の”メガンテ”を見たいならロトの紋章

漫画「ロトの紋章」の凄いところはたくさんあって、一つにはドラクエに忠実だという所



例えば、ドラクエ3が名作たるゆえんは、「転職システム」が秀逸だからに他ならず、自分の分身であるキャラクターたちを自由に転職させられるという画期的なシステムは、人は何にでもなれるのだという夢を与えてもらったものだ



最も象徴的な転職は「遊び人が賢者になる」というもので、遊び人とは、ステータスが低く、ほかの戦士、武闘家、僧侶、魔法使いに何一つ勝る面がない

そればかりか、勇者の命令を無視して勝手な行動を繰り返し、戦闘の足を引っ張るというどうしようもないヤツなのだが

しかし、そんな苦労を耐えレベルが20に達したとたん、僧侶も、魔法使いも単独では到達し得ない、全ての呪文を使いこなす最強の天才「賢者」へと変身を遂げる



ダーマ神殿まで、散々苦労をかけさせてくれたアイツが!何度もルイーダの酒場へ返却してやろうと思ったアイツが!今、チームの要になって勇者を引っ張る存在となる・・・プレイヤーはそこに、ドラクエ史上最高のカタルシスを得ることができる


幼い頃にプレイした時は、なぜドラクエに「遊び人」がいて、いわば、“まっとうに”生きてきた僧侶や魔法使いよりも簡単に「賢者」に転職することができるのか、ぜんぜん理解できず、単なる裏技的なものかと思っていた

だが、大人になるとドラクエが何を訴えたかったのかがよく分かる。



人生というものは、誰にとっても順調にいくものではなく、むしろ失敗と挫折の連続で成り立っている。人は大きな過ちを繰り返す度に人生を諦めかけ、それでも立ち上がりることで成長することができる。

大きな成功を収める人は、ほとんどが大きな失敗を経験しているし、人間として魅力的なのは苦労なくイージーモードを生きてきた人ではなく、痛みや苦しみの多いハードモードを乗り越えてなお立ち上がってきた人なのは言うまでもない。



ドラクエの遊び人とは、そういう順調な社会のレールから外れているような、一見役に立たないように見える人間の象徴であり、学校に行けなくなった、就職に失敗した、モテない、うまくいかない、生きていることに意味なんかない、そういう誰しもが持っている劣等感の代弁者だ



しかしドラクエは訴える。遊び人として生きてきたあなたこそ、賢者にふさわしい。

僧侶や魔法使いよりも苦労して、それでも諦めなかったあなたこそ素晴らしい。

苦しみ続けてきた経験は必ず役に立つ時が来る。それを活かすことができるかどうかは自分自身なのだ。ドラクエには、遊び人がしっかりと賢者として生きる未来が示されていた。



ポロンは、そういう遊び人の転職を漫画で描いたキャラクーで、やっぱり根は真面目だ。ポロンにまつわる一連のストーリーは涙なくしては見れない



さらに、それだけでお腹が一杯になるというのに、ポロンにはもう一つ「共感」という役割が設定されている。



少年漫画の登場人物は「憧れ型」「共感型」の2つのタイプがあり、最初から圧倒的な身体能力を持ち、読者の憧れを誘う「憧れ型」、悩み、傷つき、成長していく姿を読者にさらけ出すいわば普通の人「共感型」



どちらも傑作漫画には欠かせない存在だが、「共感型」の登場人物こそが名作の土台を築くことは明らかだ。なぜなら、人は誰しも弱く人生に迷っており、自分の近い存在を応援し、普通の人間が活躍する姿に喝采を贈る



ダイの大冒険で、ポップのメガンテに心が動されない人はいない。映画ドラえもんで、のび太が勇気を見せた時、ワンピースでウソップが敵に背中を見せなかった時、ヤムチャの・・・あっヤムチャは違うわ とにかく人は誰しも変わりたいと願い、そういう姿を追い求めているのだ



ポロンは、幼い頃に両親を亡くして以来、本気で戦うことを避けてきた。だが、命がけで戦うアルスや仲間たちを見ては、そういう自分を恥じ、何度も変わりたいと願い一歩を踏み出すのである



読者は、“良い子”である主人公の勇者アルスよりも、人間くさいポロンに共感し、心の底から声援を贈ってしまうのだ



詳しくは漫画を読んでみて欲しいが「ポロンなくしてロトの紋章はない」と言っても言い過ぎではない





結論

ロトの紋章・・おもしろいよ!





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4 件のコメント :

  1. しよさん、こんにちは
    ぽんぽこぴーです

    ロトの紋章という漫画はドラクエ本編に忠実でありながら
    ファンタジー作品の良さである創造性を最大限に発揮してますよね
    ストーリーも単調な勧善懲悪ではなく、なにかこう人生の厳しさのようなものを学べたような気がします
    子供の頃に家の近くにあったスーパーの本売り場でガンガンを立ち読みしていたのが懐かしいです

    あれから何十年と経った今、こうしてロト紋について話せたり考えたりできるのも星ドラのおかげですw

    ちなみに一番好きなキャラは竜王です

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    1. ぽんさんこんは
      竜王とはいいとこつきますねー
      星ドラの表記が「りゅう王」になってた時は思わず笑ってしまいましたが
      竜王もりゅうおうもいるのでしかたないですね
      最初は最強っぽい雰囲気だったのに徐々にリアクション係みたいなポジションになってって私も好きでしたよ
      あの独特な鎧のフォルムがかっこよかったです

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  2. ロトの紋章の話を書けって言ってんだろ!
    半分以上ツインシグナルというかガンガンというかしよさんのヒストリーじゃねえか!
    大決戦も終わっちまうぞだろうが間に合わなくなっても知らんぞーーー!



    失礼取り乱しました。
    もうあきらめて満喫いって全部読んできます。

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    1. えっ半分以上だなんてそんな・・・・・ほほほんまや!
      かなり控えめに書いたのにガンガンの話がつきやしねえ!
      次があれば
      きっとロトの紋章の名場面について語るぞー

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