Switchにはマリオがある。PSには…スパイダーマンがあるじゃないか【マーベルスパイダーマン感想】

スパイダーマンといえば、米国発のアメコミヒーロー。

その人気はとどまることを知らず、日本でも数年前に公開された映画は記録的な大ヒット。コミックの世界から飛び出し、映画のみならず、ありとあらゆるエンタメ興業の世界で快進撃を続けるまさに超人です。

そんな、今やヒーローの代表とも言いうべき彼が、今度はゲーム業界に殴り込みをかけて来るという話を聞いた時は、正直、面白いゲームになるのかどうか疑問でした。

なぜなら、この世界では、昔から原作のあるキャラクターもののゲームは、失礼ながら中途半端なディベロッパーと貧弱な資金・開発体制により、表面に金箔を散りばめ、見かけだけを良くした量産型のマンネリアクションゲーと化しているのが普通であり、ファンであれば納得の体験を得られても、初めてランディングした素人にとってはもはや苦痛以外の何物でもないという悲劇が数多く発生していたからです。

ところが、このマーベルスパイダーマンはどうでしょう。

完璧だな

非の打ち所がない。

もともとゲームのために存在しているんじゃないかと思わせるニューヨークの景観、スパイダーマンの挙動。何時間プレイしても飽きないではないか・・!

プレイを迷っているあなたには、迷わずおすすめしたいですし、キャラクターゲーム否定派とも言える私の古臭い価値観を粉砕し、思わずぐうの音を上げる他なかった幾つかのおすすめポイントを挙げときます




PS史上最も安全なAAAゲーム

CEROレーティングはC

PS4のゲームはだいたいCERO「Z」。

つまり18歳以上推奨であり、なぜかというと、ひとえに「暴力的」だと判断されているからです。

洋ゲーというものは、伝統的に流血などの表現がリアルでエグく、「ファンタジーなら安全そうだね」と恐る恐るウィッチャーに手を出せば、登場モンスターのあまりのグロさに卒倒し、「遺跡探検ものなら大丈夫だね」とトゥームレイダーに手を出せば、考古学そっちのけで銃撃戦に明け暮れる始末


だがご安心ください


  • 完全に丸腰で
  • 街行く市民には一切の危害を加えることなく
  • 車を奪ったり豪邸に住むなどもってのほか
  • 寝る間を惜しんでボランティア活動に精をだし
  • 町に巣食う乱暴者を懲らしめ
  • 何の見返りも求めない


そんな、日曜日の朝9時から放送しても大丈夫なゲーム、それがスパイダーマンだ!





扱いが雑すぎるヒーロー

ファミコンの「スパルタンエックス」とは訳が違い、リアルさを追求したHDゲームにとっては、同じ「殴る」「蹴る」という行為であっても、ただひたすら暴力的になってしまうのは当然であり、これだけ美麗で実写的な映像を追い求めたゲームが、「暴力的ではない」と評されるのはもはや奇跡。

敵がどんな卑劣な犯罪を犯そうとも、スパイダーマンは己の体とクモパワー(にわか)のみで立ち向かいます。

ところで、スパイダーマンのお勧めポイントは、レーティングだけではなく、もともとのストーリー、キャラクターが持つ魅力も、ハリウッド映画としては異色だなと思います

例えば、ヒーローパワーを駆使してニューヨークを飛び回り、悪人を見つけては問答無用で縛り付けるというゲームプレイ、現実的に考えると、交通法規無視の私刑連発という「違法」感の漂う行為をしているわけですが

ゲームのスパイダーマンは、そうした行為を一切正当化しません。
むしろ、NY市警の相棒「ユリ」は、「警察無線を傍受させてやっている」という常時謎の上から目線であり、体を張って犯罪を防いだところで感謝するでもなし。厳しい。

また、オープンワールドによくある「移動を飽きさせない手段」として、ジェイムソンなる人物のラジオ番組を聞くはめになるのですが、それが、めっちゃスパイダーマンアンチで疲れるぐらい悪口ばかり

しかも「スパイダーマンが活躍することで悪のヴィランが増えた」「事件が起こるところにスパイダーマンがいる理由とは・・?」みたいな、コナン君も真っ青の的確な名推理を披露して思わず笑ってしまいます

同じヒーローものであっても、スーパーマンやアイアンマンは恐ろしい程にチヤホヤされていたような気がするし、なぜ世界はスパイダーマンだけにこんなにも厳しいのか

でも「大変な思いをして人助けをしているというのに、この仕打ちはなんだ」

と思ったところで、はっと気づかされてしまうのです。

人助けを感謝され、チヤホヤされ、モテまくりたいと思う自分の浅はかなヒーロー願望

ピーター(中の人)は、作中登場する唯一の家族メイおばさんに認められたくてヒーロー活動をしいるわけではなく、まして、ニューヨークの人々に尊敬されたくて活動しているわけではありません

自分の人生を、頑として他人の期待を満たすことに使おうとせず、どこまでも自分の意志でもって主体的に生きているだけ、そんな逆碇シンジ君のような人間、それがピーターって奴なんです
自分を省みれば、果たしてここまで割り切った生き方ができるかなと甚だ疑問ですが、彼が見返りを求めずヒーロー活動をしているのだと考えると、夢中になって物事に打ち込む一人の若者らしく見え、心から応援したくなってきますね

大いなる力には、大いなる責任が宿る

とは、映画スパイダーマンの心に残る名ゼリフだったと思います。

スパイダーマンが振るう「力」は、決して悪人に振り下ろされる正義の刃ではなく、ピーターという一人の迷える若者が、自分の責任で選んだ生き方なのです。

ゲーム中に執拗に繰り返されるスパイダーマン下げからは、暴力を正当化したくない、そんなメッセージが伝わってきます。




登場人物もみんなヒーロー


スパイダーマンの中身のピーター君は、まだまだ成長途中の若者という部分もいいですね

色気立つフェロモン男優が主人公となることが多いハリウッド映画界隈において、いわば人間として未完成の少年が中心となる物語は珍しいし、逆におっさん主人公が珍しい日本のコミックを見慣れている我々にとっては、なじみやすい設定です

また、ゲームスパイダーマンが驚くべきは、登場人物たちも、あふれんばかりの個性と自主性を発揮しているということ。
ユリ然り、メイおばさんしかり、中でも、ピーターの元恋人MJは特に恐ろしい。

元彼がヒーローだということを鼻にかけないどころか、終始「逆に迷惑ですけど」的な態度であり、「ニューヨークを救うスーパーパワーの持ち主に惚れられている」などという無敵の属性を気にもとめていない様子。

日本だったら完全にSNSで匂わすところですが
この町ではパートナーがいてもいなくても関係なく、自分とキャリアのために生きる。それこそが、ニューヨーカーの流の働き方改革だとでも言うのだろうか。

MJは押したり引いたり電話を一方的にスルーしたり、恋愛上級テクニックを駆使しピーターを完全に手玉に取ります

ひとことで言うとふびん

だが分かる。

ピーターは幸せに違いないのだ・・

あと、スパイダスーツを着ていると筋肉美が映えるピーターですが、私服は何かもっさりしていて好感が持てますよ
他にも、「ブラックキャット」や「ハマーヘッド」「シルバーセーブル」など、インパクトのあるキャラが多くて見どころばかりです。




肝心のゲームのプレイ感

肝心のゲーム体験については、他の方や専門誌の感想にほぼ賛成

簡単、爽快、他にない!

子供に見せても安心な内容であり、PSストア公式でも、セール時はだいぶ安くなっているので、もはやPS4の定番ソフトになるポテンシャルを秘めていると本気で思います。任天度のマリオのように。



最後に、マーベルスパイダーマンが、現実世界寄りなリアルなヒーロー像を描いているのだとしたら

ヒーローにはなりたくないな

と思わずにはいられませんでした。いつの世も、普通がいちばんなのかもしれません。









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