小学生の頃、ダイが連載されていた週刊少年ジャンプはドラゴンボールや幽遊白書など一斉を風靡したマンガばかりで、その影響力は凄いものがあり、
まだネットも何もない時代、みんなとにかく雑誌に夢中になっていました。
ジャンプに登場するカッコいい必殺技というのは男子憧れのまとで、その代表格といえばドラゴンボールの「かめはめ波」ですよね。
誰かが「かーめーはーめー・・」と構えたら
「こんな所で気を解放しやがって・・」
「相変わらず無茶しやがる」
となって、その危険な空気に場が凍り付きますよ。
でも分かってるわけです。小学生ともなると「現実にかめはめ波は出せないな」と
同時に「それは100%ではないよね」という希望も持っていて、凄い修行を積み重ねることで、自分の体だけに特別な何かが起こり、いつか本物の「かめはめ波」が出せるようになるんじゃないかと、本気で信じているのも小学生なわけです。
少年の日常はちょっかいやおふざけという些細なきっかけからバイオレンスな展開に発展することが多く、最初は
「おまえやめろよー笑」
とか言ってたのに、いつのまにか
「デュクシ!」
「体の痛い部分!怒」
と徐々にヒートアップしていき、そのうち本気になって「一発は一発だ」と殴り合うようになります。
そこで登場したのがK君のアバンストラッシュですよね。
ダイの大冒険はその頃絶賛連載中で、当然みんなが大好きだったんですが、ある頃から少年特有の「オレ、そんな子供っぽいもの卒業したぜ」シンドロームが流行しまして、その最たるものはドラえもんですが、
それと同じように、ダイの大冒険もファンタジーマンガという属性のせいで、朝シャンとかを始めたイケてるグループに「ダサいもの」扱いされるようになってしまって
私は、本当はダイが大好きだったんですが
「ファンタジーとか興味ないし」
的な態度をとっていて、今思うと完全な馬鹿野郎なんですが、そんな中、ダイの大冒険がめちゃくちゃ好きなK君という友達はいつまでもダイの大冒険好きを公言して貫き通してたんですね。
そして彼の繰り出すアバンストラッシュの威力ったらない。
アバンストラッシュはダイの大冒険の序盤からアバン先生の必殺技として登場するんですが、習得が難しく、パワーの大地斬、スピードの海破斬、見えざる敵を撃つ空裂斬をマスターしないと出せない超必殺技で、
さらに、剣を逆手に持つという独特の構えも、その頃の少年たちにとって、傘など棒状のものですぐ真似することができる大好きな必殺技でした。
「K君が長いエモノを逆手に持ったらだいたいアバンストラッシュ」
そういう話が広まるほど、彼の技はみんなに一目置かれていて、実際、彼が学校でも公園でも武器さえあれば頻繁に繰り出すアバンストラッシュは本気で痛かったですし、
私も何回も「今の完全に折れたわ」ってなったんですけど、まあ骨って簡単には折れない。
周りから馬鹿にされたとしても、自分のスタイルを貫き通したK君の姿勢はとても尊敬できるし、彼がその後の人生で迷ったりしているのを見ていても、あの頃のK君の輝きを思えば、これからもきっと大丈夫なんじゃないかと思うわけです。
そんなみんなを夢中にさせた「ダイの大冒険」が少年の心に残したものは一つのマンガ以上のものがありました。
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1、ポップは失敗を認める
ダイの登場人物であるポップは今のワンピースでいう所のウソップみたいなポジションで、ダイの大冒険の物語自体がポップの成長物語になっています。ポップは少年ジャンプの登場人物らしくなく、最初の強敵であるクロコダインとの戦いでも「死にたくない」という理由で主人公のダイを見捨てて真っ先に逃げてしまったり、物語後半でミナカトールという力を合わせて使う魔法も、ポップだけが失敗してしまいます。
ポップはいち読者としても辛くて見てられないぐらい大きな失敗をするんですね。
つい先日、私は大勢の人の前でマイクを握る機会があったんですが、
練習に練習を重ね、自信満々で原稿を用意していったにもかかわらず、思いっきり嚙んでしまいまして
「られらっ・・られまっ・・ァバッ・・」
と修正しようとすればするほど深みにはまり、もう消えてしまいたいという気分だったんですが、
ポップの凄いところは、そういう目を背けたくなる、認めたくない「失敗」「自分は弱い」ということとちゃんと向き合い、自分を変えていく所なんです。
たとえ失敗を認めず、逃げて一時的にそれを無かったことにできたとしても、人生に失敗はつきもので、いつかまた同じことを繰り返してしまうのが人であって、
誰でも多くの場合は自分の弱くて嫌な部分は直視したくないですよね。
失敗と向き合うのはとても勇気のいる行動で、今思えば「弱虫」ポップの生き様は簡単には真似できない、実はとても「強い」生き方だったんだなと思うわけです。
そういうわけで、私もポップを見習い、わざわざICレコーダーで自分の噛んだ部分をリピートして聞いてますからね。
この気持ちを一言でいうとつらすぎる。これがポップの気持ちか。
2、ポップは格好つける
ポップ最大の見せ場の一つに、記憶を失ったダイを狙って来たバランと戦うシーンがあるんですが、ポップは勝てないと分かっているのに超竜軍団を足止めするため格好つけて戦いを挑みます。そもそも男が格好つけるということはとても重要だなと思って、何故かというと、男は格好つけないと社会性ゼロみたいない生き物じゃないですか。
「自由な時間がある限り趣味に没頭していたい」
と私もそう思うわけで、格好つけるとは、ありのままの恥ずかしい自分の上に着る鎧みたいなもので、
そういう鎧をまとっているからこそ、仕事へのモチベーションを維持できたり、大きなプレッシャーがあっても、普段の自分以上の力を発揮できるわけです。
そして何と言ってもそれは「向上心」という言葉に置き換えることもできますよね。
ダイに登場するキャラクターたちは、みんな純真無垢な心の持ち主で格好つけたりはしないんですが、ポップだけは常に周りに追いつこうと弱い自分を隠してカッコつけようとしていて、その姿勢は大人になるととても共感できるなあと。
凡人だから人一倍格好つけたい。ポップの凄い上昇志向。
3、ポップは告白する
ここを見てるあなたは不二家のカントリーマアムを見たら、必ず武闘家マァムを思い出すと思うんですが、ポップは、ジャンプマンガにしては珍しく片思いをしているマァムに、はっきりと「好きだ」と言います。ダイの大冒険ではマァムの心の動きというものがあまり掘り下げされていなくて、イケメン・ヒュンケルを好きなような雰囲気もあったのですが、どういう考えを持っている人か最後まで分かりませんでした。
ジャンプで見ていたころはダイの恋愛要素とかは全く興味がなかったんですが、大人になると、マァムはどう考えてもポップとくっつくんじゃないかと思うんですよ。
女性は極端なイケメンを警戒する性質があるじゃないですか。
きっとダイの世界でも例外ではなく、ガイコツに育てられた、生真面目な性格の細マッチョなイケメン、というスペックはかなり過剰で、女性にとって毎日一緒に日常生活を送るのには疲れるわけです。
そこでポップを見てみると、愛嬌や社会性があり、いざという時には頼りになる、そして武器屋の息子。どう考えてもポップちょうどいい。
その頃のポップとえば大魔王を倒して、本当の勇気も手に入れて、上昇志向があり、好きな人に真面目な顔で思いっきり好きだと伝えることができる。
おいこの男モテるぞ。
4、最後に
心や直感は、既にあなたが本当になりたいものを知っている。それ以外は二の次だ。というアップルの創業者スティーブジョブズの有名な言葉がありますが、ポップは勇気を出して自分の心に従っているからこそ、一度逃げ出しても戻ってこられたわけで、そんな素直な心がポップ最大の武器であり、ダイの大冒険における「普通の人代表」のポップが持たされていた役割だったんだなと、しみじみと感じることができました。
間もなく終了ですが、星ドラのダイコラボ最高でした。
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