ドラクエ11

ドラクエ11 感想その73 ヤヤクに共感してしまうのはゼクス・マーキスを好きな理由とだいたい同じ

アニメでも、主人公よりも魅力的な脇役って多いですよね

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魔法少女級の衝撃展開

なぜか火竜をかばったヤヤク

その後どうなったかというと食べられました

村人A「なんとヤヤクさまが食べられてしまうとはっ！！」

いや本当に

一瞬のできごとで「え？」という感じだったんですが

何なら「まどかマギカ」のマミさん最後のシーンぐらい衝撃的で理解が追いつかなかったわけですが

どんでん返しも、奇跡もなく

本当にただ食べられました
村人B「ううっううう…ヤヤクさまが人食い火竜に食べられてしもうた。もうホムラの里は終わりじゃあ…」

村人C「ヤヤクさまもハリマさまも亡くなって、これからいったい誰がわしらをお守りくださるというのかっ…」

リーダーを失い動揺する村人たち



火竜はその後、勇者たちが追い払い、火山の方向へ逃げていきます

「人食い火竜を放っておくわけにはいかねえな」ということで、竜が逃げたヒノノギ火山へ竜退治へ行くことになりました

火山のカギを借りに神殿へ行くと、ヤヤクの世話係が「手記」を見せてくれます

村人D「火竜めを倒す前に…どうかこれをお読みになって真実を知ってくださいまし…」

そこで、ことの真相が全て明らかになりました

ヤヤクの手記全文

時折、無性に大声で叫びたくなる。

おのれの罪を決して忘れぬようこの手記に真実を書き記しておこう…

…激闘の末、私とハリマは人食い火竜を退治した。

ハリマの一太刀がとどめとなったのだ。

だがその刹那…火竜は断末魔のごとく黒い瘴気を噴き上げ、ハリマはそれを浴びてしまった。

倒れたハリマを連れ、里に戻り、私は必死にあの子を看病したが…

あの瘴気は火竜の呪いだったのだ。ハリマの姿はだんだんと火竜に近づき、とうとう里では隠しきれなくなった。

里の者に知られたら殺されてしまう…。

私はハリマを火竜との戦いで死んだことにし、火山に隠すことにした。

私は、ハリマを元の姿に戻す方法を死にもの狂いで探した。

そしてついに見つけだしたのだ。

真実の姿をうつすという「やたの鏡」…。

これでハリマも元の姿に戻れるはず。

しかし、いくら火竜をうつしても鏡は反応せず。

真の使い方がわかるその日まで、私は肌身離さず鏡を持っていることにした。

だが時は待ってはくれぬ。ハリマが人の血肉を欲するようになり、里からいけにえを出すしかなくなった。

いけにえを出すこと…悩み、苦しんだがどうしても私はかわいい息子ハリマを見殺しにすることなどできぬのだ。

やたの鏡の使い方さえわかれば、ハリマを救うことができる…。

ハリマを生かすためならば、この修羅の道、歩いてみせよう。

たとえどんな罰を受けたとしても…！

ロウ「母親というのは…子供のために自らつらい道を選んでしまうものじゃ。ヤヤク殿も葛藤し、苦しんだことじゃろう」

「そのやたの鏡さえあれば、あるいはハリマさまの呪いを解けたかもしれんのう。だがしかし…」

テバ「…やたの鏡はヤヤクさまと一緒に火竜に食べられたんだ。ハリマさまの呪いを説くことはもう…」

ヤヤクに共感してしまうのはゼクス・マーキスが好きな理由とだいたい同じ

村D「…すべてを投げ打ち、救おうとした自らの母を食い殺すなど…！あれはもはやハリマさまではありませぬ」

「ただ自らの欲望を満たすため、人を食らい続ける悪竜でございます！どうかあの火竜めを退治してくだされ…！」

村人E「うぅっ…ふぐっ…。ヤヤクさまにどんな事情があったかなど、今はそんなことどうでもよいだろう！」

「ヤヤクさまは、ヤヤクさまはな…。ホムラの里が誇る偉大な巫女さまだったのだ！それがあんな…！うぅっ…」

村人の様子から、ヤヤクは生前、ホムラの里の民にずいぶんと慕われていたことが分かります



リーダーが人を引っ張るためには、みんなを納得させる正当性が必要で

ヤヤクは巫女という立場もあったかもしれませんが

発言を見ていると、困難にも立ち向かう強い心と、決してブレない統率力の持ち主であり、周囲に「あの人しかいない」と納得させるタイプの人間だったと思われます。

セーニャが疑問に思ってましたが

「生贄を差し出す」という非人道的な行為に異論がなかったのも、それだけ、普段からヤヤクの信頼とカリスマ性が凄かったからじゃないでしょうか。



そんなヤヤクが、立場を利用してまで生贄を差し出す決意をしたのは、実は、テバが思うような私利私欲にまみれた理由ではなく、息子を助けたい一心だったわけで

手記では「時折無性に叫びたくなる」ほど後悔していることを告白しています。

わが子を助けるにはこの道しかないのだと覚悟を決め、全ての業を背負う覚悟だと言っていたにもかかわらず

いざ、火竜が村に乱入してきた時にヤヤクがとった行動は、息子も、村人も全部守り、自分が犠牲になるという選択で

頭では、冷徹なリーダーとしてふるまうと決めていても、ヤヤクの心は非情になりきることができませんでした。



ところで「ゼクス・マーキス」って知ってます？

ゼクス・マーキス

アニメのガンダムWに登場する、簡単に言うと平和のために戦う主人公のライバルキャラで、ことあるごとにぶつかり合う仮面の男なんですが

序盤は、ただの対立する組織の悪役キャラかと思いきや

途中からゼクスの出自だとか、考え方が明らかになってきて、この男の最終目標も実は主人公と同じ、世界平和の実現だということが分かるんですね

そのために、色々悩んだり、葛藤しなが、らわざと戦争を起こそうとする過激な方法をとるとか、行動は全然理解できないんですが

理想のために主人公と全く違う生き方をするという彼もまた主人公の一人なんだなあと、当時めちゃくちゃ考えさせられ

またセリフ回しも独特で凄いんですよ

ゼクス「必要ないのだ！宇宙にとって！貴様たちは！」

うーん・・良い

凄い好きなキャラだった



ドラクエでヤヤク様に共感してしまうのも、何かこの「ゼクス感」を感じるからで

誰もが幸せになれるベストな選択ではないのを分かっていて、悩み抜いた末に、悪役になる覚悟をもってベターな選択をするのだと

現実の世の中も得てしてそんなもので、すっきり問題が解決することなんてないですよね

大人として、ヤヤク様のように強く生きて死にたいものだと思わずにはいられません。

ハリマの頼み

火竜と戦っているシーンのスクリーンショットがなかったのでエビーメタルをご覧ください

火竜を倒すと、どこからともなく声が聞こえてくる

「…終わりだ。悪しき火竜よ。やたの鏡のチカラの前に滅するのだ…！」

ハリマ「…ようやく元の姿に戻ることができた。そなたたちのおかげだ。礼を言う」

「火竜の呪いのチカラはとても強く、外からやたの鏡を照らしても、その光は届かなかった。だが…」

「そなたたちが火竜を弱らせてくれたおかげで、体内にあったやたの鏡のチカラが発揮されたのだ」

「…長く火竜になりすぎたらしい。私の寿命はもう尽きるだろう」

ハリマ「…最後にひとつ頼みを聞いてほしい」

ハリマ「私の母ヤヤクに伝えてくれ。これで里は救われたと。そして…いつまでも幸せにと…」


少しの間だけ、人間の姿に戻ることができたハリマは

母の期待に応え、里を守り抜いたことを誇りに思いながら旅立ちます


その場にいた誰もが

ヤヤクが死んだことを伝えることができませんでした

テバ「…おいら、ここで火竜を見つけた時、みんなをだましてたヤヤクさまを絶対ゆるさないって思ったんだ。でも…」

「おいらが、かあちゃんをいけにえにしたくなかったみたいに…ヤヤクさまも家族を守りたかったんだよね」

「ヤヤクさまとおいら、同じだね。悪いことしたとこも、家族が大好きなとこも…」

いけにえはテバの母が初めてなのか？問題

村人G「信じていた長に裏切られ、もうわしらを導く者は誰もいない。この里はいったいどうなるんじゃあ…！」

テバ「ヤヤクさまのしたことは許されないけど…。もしヤヤクさまがいなかったら、この里はとっくに火竜に滅ぼされてるよ」

「きっと、ヤヤクさまはずっとずーっとおいらたちに悪いと苦しみながら、心を鬼にしていけにえを出したんだよ」

テバ「おいらたちを縛るものはもう何もないんだ！英雄も神様も助けてくれないけど…。これからはおいらたちでがんばっていこう！」



ストーリーが終わる段階になり、小僧が急に名演説をはじめる


その思慮深さがあれば、神殿に乱入して混乱を引きおこすこともなく

もっと色々話し合ったりできたような

いつの世も

少年の成長とは急激なものなのだ！

もう小僧とは呼べないな



ホムラのエピソードの最中、ずっと「いけにはテバの母が初めてなのか？問題」を考えていたんですが

このテバのセリフ

「ヤヤクさまはずっとずーっとおいらたちに悪いと苦しみながら、心を鬼にしていけにえを出したんだよ」

絶妙です

ずっと生贄を出し続けていた

とも読めるし

ずっと苦しんで、はじめて生贄を出した

とも読めて、これは解釈の幅を持たせるために、わざとぼかしているんじゃないかと思います。

物語としては「生贄を出し続けていた」という方が分かりやすいんですが、ヤヤクをあんまり悪者にしたくないという開発者の意向としか考えられません

私も、ヤヤクは結局一人の生贄も出さなかったという結末を信じたいです



終わりに、ハリマにまつわる真相を知らないはずの村人のセリフ

村人Z「不思議な夢を見たのだ。ヤヤクさまが火竜と共に寄りそって川の向こうへと歩いていく夢だったよ」


どうか安らかに




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